ウェスタンブロット用電源装置

背景

タンパク質の研究には、電気泳動がつきものです。少しハイレベルな研究では、タンパク質を標識して検出するための抗体を使います。 抗体を使ってタンパク質を研究する方法に、ウェスタンブロット(別名イムノブロット)があります。  ウェスタンブロットでは、はじめにゲルを使って電気泳動でタンパク質を分離し、その後、ゲルからナイロン膜に蛋白質を移しとる(転写する)、という2段階の作業が必要になります。  はじめのゲル電気泳動は、2枚のガラスの隙間に通常1ミリ程度のアクリルアミドというポリマーのゲルを作り、両端に100-600ボルトの高電圧をかけてそのゲルの中にタンパク質を泳動して分離します。 100-600ボルトは感電すると危険なので、市販(岡野研では松定プレシジョン製)の電源装置を使います。  電気泳動が終わった後のゲルを膜に写しとる作業は、タンパク質をゲルの厚み分だけ移動させればよいので、低い電圧でゆっくりと泳動します。 研究室で使用している転写装置(バイオクラフト製、セミドライトランスファーBE-340)を使った条件だと、15-18ボルトくらいの定電圧で1時間の転写が必要になります。  ウェスタンブロットで用いる電源装置は、比較的低い電圧で十分ですが、十分な電流容量が必要になります。 ゲルのサイズによりますが、0.3-1アンペア程度の電流が流れます。  電圧を変化させることができる専用の電源装置が多くの専門メーカーから発売されています。平均的には5-10万円程度、安くても12,000円くらいはします。岡野研では当初、高砂製作所のLX018-2A(29,800円)を使用していましたが、この電源を他の実験に使うことが多くなり、ウェスタンブロット用の電源が必要になりました。

経緯

市販の電源装置は電圧を変えることができたり、電流を表示したり出来ますが、よく考えてみると、いつも同じ電圧で作業しています。 もしかしたら、廃棄したPCの附属の電源などが使えるのではないだろうか?と考えて試してみたところ、全く問題なく転写できました。

材料

作り方

ACアダプターの線を切って、下の写真のように、チップジャックを接続するだけです。ハンダ付けする前にキャップに線を通しておくことと、プラスとマイナスを間違えないこと。 ハンダ付け後は、少し強い力で引っ張って、しっかりくっついているかどうかを確認しておきます。

経費

ACアダプターとチップジャック合わせて2,000円以内です。ここで使用した電源には、LEDランプが付いているため、通電が確認できるので便利です

関連情報

「通電ランプがなくてもいいからさらにもっと安くコンパクトなものを作りたい」という場合には、電源容量の小さめの別のACアダプタ(15V, 0.8A, GF12-US1508、秋月電子)を使うとよいでしょう(下図)。最大電流は0.8Aですが、9cm x 14cm程度のゲルであれば大丈夫です。 岡野研が担当している電気・情報生命工学実験Cでは、こちらのACアダプターを使用して作製した電源装置を使用しています。1台あたりのコストは800円以下、 25セットを作製して材料費は20,000円程度でした。 転写装置も実は単なる電極板が2枚あるだけなので、作ろうと思えば作れるのかもしれません。